日枝神社 ご祈願、お参りは日枝神社へ
「山王歌壇」のご案内

第八回
日枝神社 山王歌壇

石本隆一 選
「氷原」短歌会主宰
前現代歌人協会理事

 
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〒100-0014
東京都千代田区永田町2-10-5
日枝神社 「山王歌壇」係 宛


薄れゆく大きな虹も一度くらい地球に足をふれたかろうに
片山 順子
徐(おもむろ)に消えてゆこうとする虹への哀惜(あいせき)を擬人化と口語調の呼びかけで 如実にしている。下の句のたどきなさも実に虹にふさわしい。

 

ランドセル娘と共に春を待つ小さな背中に光りかがやけ
高原 聖司

新入学をランドセルも待っているという視点がおもしろい。やがて 娘に背負(お)われて光となるであろうとの結句の推量を含んだ命令形にインパクトがある。

 

寒月(かんげつ)の光に凝(こご)る身を溶かす湯槽(ゆぶね)の空にだいだいの月
早川 雄二
湯船から見上げた空に橙色の月が浮かんでいたのである。それを見やって柚子(ゆず)湯の温(ぬくと)さが感得されるような気がしたのかもしれない。身体 的感覚によって外界の物象も温かいものに見えるという機微(きび)が描出されている。

 

真黒の顔に汗して走り去るアンカー襷(たすき)の孫頼もしく
宇田川蓉子

 

この国に冷水浴(あ)みて覚めし目も内の熱気のややに吹き出づ
平井 邦長

 

七宝(しっぽう)の焼き具合見て美しきその出来栄えに心充たさん
河野 明子

 

石塔を縛るがごとく草茂り兵(つわもの)兵眠る和賀島まくらに
齋藤 正子

 

君よばん気負う豆撒き鬼遣(や)らい年を取るとも健福来たれ
栗原 崇次

 

冬の朝おはようの声あたたかく清掃の手にも力が入(はい)る
谷藤 大典

 

凍て雲の下に聳える楼閣の間(あわい)に映ゆる社殿の朱(あけ)が
大西 亜彩

 

唸りあげ赤松燃ゆる登窯(のぼりがま)若き陶工の叫ぶがごとく
鈴木 紀子

 

目に見えぬ風の流れは稲田にも波打つような葉のうねりあり
伊澤 成子

 

氏神に初孫抱いて宮参り狐も狛犬(いぬ)も笑顔向けおり
広瀬 栄

 

何事もなくまた朝を迎えけり床(とこ)のぬくみをしばし楽しむ
菊地 保正

 

祖母訪ね集まれる場に人の顔ほころぶときに蕎麦(そば)を打つ音
中西 清乃

 

鳥の声まだ鳴く前に家を出て頬に差し込む風のつめたさ
五十嵐央子

 

天高し高き雀の囀りは夢と行く末ちかいて舞うか
薮田 昌子

 

鈴の舞い澄みし音色よ魂(たま)の元届きまいらせ和(やわ)く祀(まつ)れよ
齋藤ひろ子

 

君連れて寄り添う夕べ木漏れ陽を過ぐるわくらば歌う蜩(かなかな)
山田 理史